なんとも評価しづらい本です。
日本語のマイヨール評伝はこれしかないので、フランス語や英語に通じていないと、選択肢は他にありません。
細かく調べ、現地でのマイヨールの彫刻写真も載せていますし、著者の思い入れも強いのですが、踏み込みが弱いので平板です。網羅的ですが深みにかけますので、芸術についての書であるのに「事実学」に留まっています。
その「事実学」(フッサールの言葉=概念)に、著者の主観性が接ぎ木(内的な主観性の豊穣というのではなく、客観と主観が外的に接続)されているために、知らない人が読めば、著者の見方に誘導されてしまうのではないか、と危惧します。
マイヨールの発想の根源は、イデア的普遍性を支える「性=make love」への自由で健康な態度にあるのですが、それらについては、「ダフニスとクロエ」の章で遠まわしに記述するのみです。
また、バッハへの称賛を書きながら、モーツァルトへの熱愛、「もし、芸術家になるならモーツァルトにならなければいけない」とまで言っていた事実は省く。
紙質も装丁もよい本ですが、マイヨールを著者好みに脚色しては困ります。
フランス語、英語、スペイン語、ドイツ語では、新しい評伝も出ていますので、翻訳本が出ることを望みます。
内的充実の極み・存在そのものの豊穣。20世紀のマイヨールは、ルネサンスさえ超えて、もちろんキリスト教を超えて、ギリシャのイデアに直結する奇跡をなし遂げました。その真価を21世紀に生きるわれわれは感じ知る必要がある、そうわたしは思っています。

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マイヨール 単行本 – 2001/11/1
氷見野 良三
(著)
- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社ルックナウ(グラフGP)
- 発売日2001/11/1
- ISBN-104766206452
- ISBN-13978-4766206456
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
邦語によるマイヨールの本格的な評伝。ロダンと共にフランスの近代彫刻を代表するマイヨールの82年の生涯と作品を多数の文献から択び、マイヨール自身の言葉によって辿る。
登録情報
- 出版社 : ルックナウ(グラフGP) (2001/11/1)
- 発売日 : 2001/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 278ページ
- ISBN-10 : 4766206452
- ISBN-13 : 978-4766206456
- Amazon 売れ筋ランキング: - 280,031位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2013年10月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2007年5月17日に日本でレビュー済み
日本の金融関係の仕事に携わっている方が、これほどのものを著した事にまずびっくり。
それにこの方とってもお若い。
マイヨールって、作品は若い時から知っているし、大好きな彫刻家です。
でも、本人のことはな〜んにも知りませんでした。
分かりやすい文章で、すごく良く書かれています。あっという間に読めてしまい、もったいない感じさえしました。
すでに作った彫刻を切ってつなげて新しい作品を作る彼の制作の仕方も興味深かったし、
私が一番面白いと思ったところは、助手を求めてピカソがマイヨールのところに訪ねてきてのやり取りです。
助手ってかなり重要だったんですね。初めて知りました。
とても臨場感があって、説得力ある情景です。
マイヨールの素朴さが良く著わされて、大変楽しく読めました。
それにこの方とってもお若い。
マイヨールって、作品は若い時から知っているし、大好きな彫刻家です。
でも、本人のことはな〜んにも知りませんでした。
分かりやすい文章で、すごく良く書かれています。あっという間に読めてしまい、もったいない感じさえしました。
すでに作った彫刻を切ってつなげて新しい作品を作る彼の制作の仕方も興味深かったし、
私が一番面白いと思ったところは、助手を求めてピカソがマイヨールのところに訪ねてきてのやり取りです。
助手ってかなり重要だったんですね。初めて知りました。
とても臨場感があって、説得力ある情景です。
マイヨールの素朴さが良く著わされて、大変楽しく読めました。
2013年9月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
写真集かと思いましたが、作品の写真が意外に少なかったのが残念。